リセットボタンを再び押す…パク・ヒョンシクの時間はいつだって「今」から始まる。
「過去に戻りたいとは思わない。あれだけ一生懸命やったし、もっと上手くできる自信もないから。それが本当にベストだったんだ」
GQ: …金髪じゃないんですね?
ヒョンシク(HS): また染め直したんです。まだ『ドンジュ』として見ていただくことが多いので。
GQ: 日本でのファンミーティング(ユニバーシクティ)の写真を見て「ソ・ドンジュ」を完全に消したのかと思いましたが、そうではなかったと。
HS: もちろんですよ。まだ一緒にいますからね。でも『宝島』の撮影をしていて、ずっと「ドンジュ」として生きてきたから、ちょっとしたイタリを求めてリフレッシュしたかったんです。ちょうど日本のファンに会う機会があったので、このタイミングでサプライズも兼ねて黄色に染めてみました。
GQ: ただの口先の話じゃなく、よく似合っていましたよ。
HS: ありがとうございます。よく考えたら、ブリーチをしたのはこれで多分二回目くらいです。だからこんなに反響があるとは思っていませんでした。一瞬のイタリ、すごく楽しかったです。
GQ: 久しぶりにマイクを握ったそうですが、いかがでしたか?『ドンジュ』の激しい熱量からパク・ヒョンシクとしてのステージに立ってみて。
HS: 今回のステージが良かったのは、MRではなく本当の生演奏、ライブバンドと一緒だったことです。僕もバンド部出身ですし(笑)。バンドサウンドへの反応、あの感動がまだ残っていたんだなと。『これだ!』という気持ちでただ思い切り楽しめたと思います。
GQ: YouTubeで観ましたが、本当に走り回っていましたね。
HS: でしょ!自分でも知らないエネルギーが出たみたいで。どれくらいかというと、あまりに走り回ったせいで翌日体がめちゃくちゃ痛かったです。でも何より最高でした。
GQ: 『宝島』で体力を使い果たしたと思っていましたが、良かったです。
HS: そうですね。回復が思ったより遅いのは確かですが。
GQ: 体力の話が出たので伺います。今回の作品のように体力的・精神的に限界に近づいた作品はこれまでになかったと言っていましたが、どんな思いで限界まで挑もうとしたんですか?
HS: 複合的な感情ですね。そのたびに違った気持ちだったと思います。ただ今は『ドンジュ』をしっかり送り出したいという思いが大きいです。ここまで来たらきちんと締めくくりたいという気持ちですね。
GQ: 俳優が「大変だ」と口にするなら本当に大変なはずです。現場は有機的な生態系なので、そう簡単に愚痴は言わないと聞きますが。
HS: 僕も後半は確かに体力的にかなり消耗していたと思います。でも作品の中の『ドンジュ』の感情もどんどん底に落ちていく段階だったので、この二つが重なって、本当に大変でした。先輩方がよく言っていた「作品やキャラクターから抜け出せない感覚」というのが何となくわかった気がします。これ以上深みにハマると体力的にも精神的にもダメージがあるかもしれないと感じました。
GQ: あなたはあれほど激しく演じられましたが、視聴者は『俳優パク・ヒョンシク』の新たな一面を発見する時間にもなりました。
HS: 正直なところ、俳優としてこういう姿を早くお見せしたかったんです。
GQ: どんな姿が?
HS: 『宝島』のようなジャンル、『ドンジュ』のようなキャラクターなど、荒々しいストーリー、綿密な心理戦、アクション、スピーディーな展開、そういったことをもっと早くやりたかった。ですが、自分がやりたいと思ってもできるものではなく、もし運よくもっと早く、20代で今の役が来ていたらうまくできたか考えましたが…いや、僕には無理だったと思います。自信もなかっただろうし。だから今回の作品をやるタイミングが本当に良かった、非常に合ったと思います。
GQ: 準備ができていたということですね。
HS: はい、だから台本を受け取ったときに思い切って「チャンスだ」と感じました。もちろん周囲からはさまざまな意見もありましたが、仰るとおり俳優として新たな面を見せたい気持ちが強かった。希望も見えましたし。
GQ: 何よりも『ドンジュ』が立体的に見えたことが良かったです。どんな感情でもそのまま透明に伝わってきました。
HS: ありがとうございます。
GQ: 『ドンジュ』の感情がこんなにも立体的に表れるまで、パク・ヒョンシクのどんな部分が一番作用したと思いますか?
HS: 努力という言葉では少し曖昧ですが、とにかくドンジュは底辺から荒い人生を生きて、夢のために大山へ入り、信頼を得るために計算された行動をする。だからほとんどのドンジュの姿は堅く事務的ですが、ある瞬間で本当の姿が露わになります。隠す間もなく。立体的に感じていただけたなら、おそらくドンジュの現在の感情ではなく、その裏に隠れた複合的な感情をより深く探り、掬い上げようとしたからではないかと思います。
GQ: キャラクターを完全に理解してこそ成し得る演技でしたが、アクションはいかがでしたか?体を使うには事前の準備が必要ですよね。
HS: そうですね。普通はアクションスクールでずっとトレーニングするものですが、今回は実はアクションシーン自体はそれほど多くなくて。拷問シーンや海に落ちるシーンが多かったんです。
GQ: そうそう、海の中での泳ぎが本当にお上手でしたね。驚きました。
HS: 本当に大変でしたよ。ある瞬間、「これ、ほんの少しのミスで命が危ないかも…」って思うほどで。海底に吸い込まれるような感覚もあって、波もあるので体力もあっという間に消耗して。すごく怖かったです。でも面白いのは、台本を読んでいるときは「まさか本当に行って撮影するんだろうか?」と思っていたのに、実際に「来週から南海だ、2週間滞在するぞ」と決まったときには、(目を見開いて)「おお…!」って(笑)。
GQ: お目々に当時の驚きがまだ残っているようですね。
HS: はい、だから行きました。行ってみたら『宝島』チームの熱意や連帯感、皆の真剣さをものすごく感じて。危険を伴う撮影なのに、必要なシーンのために誰一人手を抜かずに全集中で取り組んでいて。僕も同じでした。
GQ: 進んで飛び込むってことですね!
HS: ええ。南海での2週間の撮影を境に、チームの絆がさらに深まりました。ビールを片手にいろんな話をする時間もあって、すごく楽しかったです。
GQ: 『宝島』を通して結果的に何を得たと思いますか?
HS: 僕は先輩方と作品をつくるのが本当に好きなんです。そばで先輩方の演技を見ているだけで感謝の気持ちを抱きます。学ぶことは数え切れないほど多くて。「生きた現場」という言葉がまさにぴったりで、先輩方の呼吸の一つひとつ、やりとりされる緊張感あふれるエネルギー、すべてが僕にとって学びであり、喜びです。
GQ: 最近のインタビューで「できることは一生懸命やることしかなかった」とおっしゃっていましたね。
HS: 何事も上手くやりたい性格なんです。デビュー当初、「何でもやりますからやらせてください」と事務所にお願いしたときも、正直自信はなかったんです。ミュージカルも同じで。当時を振り返ると「狂気の沙汰か?」と思うほど無謀でした。それだけ必死だったんでしょうね。
GQ: いまのパク・ヒョンシクを導いたのは、その瞬間瞬間の必死さだったのですね。
HS: “迷惑はかけないように”という思いで頑張って、乗り越えてきた気がします。幸いにも先輩方に可愛がっていただき、そのたびにまた勇気をもらって挑戦を繰り返しました。
GQ: どんなに努力しても思い通りにならない瞬間もありますよね。そういうとき、ヒョンシクさんはどう突破されたと思いますか?
HS: 正直、僕だって“バズる”スターを夢見たことはあります。それ一本で一気に…みたいな。でもそういうチャンスは僕には来なかった。むしろ、そういう時期を経なかったからこそ、僕はもっと強く、誠実になれたと信じています。毎日が沼地を歩いているように厳しかった日々も、「でも、どんなに小さくても歩みを止めなかった。少なくとも転ばなかった。後退もしなかった」という思いで耐えたからこそ、再び立ち上がる力、簡単には揺らがない力が体についたように思います。
GQ: 実は次の質問はヒョンシクさんの「姿勢」について伺おうと思っていたのですが――それが、人生でも俳優としてでも、先ほどのお話が答えになっているかもしれませんね。「誠実に、黙々と」。
HS: 僕に賢い頭があるわけでもないので、ない分、一生懸命やるしかないんです。誰かが代わってくれるものでもないですし。
GQ: ヒョンシクさんのその誠実な気質からすると、運動も得意だったのでは?どんなスポーツが合いますか?
HS: 僕は集中できる種目が好きで――クロスボウ、ボウリング、ゴルフ、射撃といったあたりですね。
GQ: クロスボウを?
HS: 以前、『アイドル陸上選手権大会』という番組に出たときに習いに行ったんですが、すごく面白くて。
GQ: ストレス解消にもなりますか?
HS: ゴルフですね。子どもの頃はゴルフがあまりに静的なスポーツに思えて嫌いだったんです。父がいつもゴルフチャンネルを見ていて、「外から見たら静かだけど、僕の中ではすごいバトルが起きているんだ」ということに気づくまでは。打って、歩いて、打って、歩いて……と思っていたんですが、実際にやってみると本当にダイナミックで、あらゆる思考が頭を駆け巡るんです。ゴルフはまさに科学的で、細かいスポーツだと感じました。
GQ: つまり「内的ダイナミズム」を愛しているのですね?
HS: そうです。それに僕は朝早く、まだ夜明け前の空気を吸いながらラウンドして、いろいろ話しながら回る時間が大好きで。終わったあとのビールも格別です。健康的でしょう?
GQ: ヒョンシクさんのお考え自体が健康的ですね。それでは、一日の中で一番好きな時間は?
HS: いいえ、実は僕は夜型人間で、午前1~2時がいちばん元気な時間なんです(笑)。作品撮影中は食べられませんが、普段はその時間に夜食を頼んでビールを飲んでいます。だから日付が変わるころになるとワクワクし始めます。
GQ: もうひとつ、ロマンティックな時間をうかがいます。今着けている時計のリュウズを回せばタイムトラベルできるとしたら、いつに行ってみたいですか?
HS: おお、それは考えたことがなかったですね!(しばらく熟考)でも、過去に戻りたいとは思わないんです。それだけ必死にやってきたし、もっと上手くできる自信もないから。あれが本当のベストだったんですよ。未来は…よくわからないですね。悲しい現実を見てしまう気がして…。僕、決めました。そのリュウズ、触らないと思います。回さない。何度考えても、今がいちばん幸せですから。